女教師ユリコ





 林原智浩は神妙な面持ちでいた。憧れの女教師と二人きりであったがシチュエーションは最悪で、いわゆる呼び出しで授業中に同級生から渡されたメモが原因だった。
 こういう時には彼女の整ったフェイスラインや二重まぶたでありながら涼しげな切れ長の目は近寄りがたく映り、長い黒髪と盛り上がった胸元の白いブラウスとぴっちりしたタイトスカートが圧倒的に大人だと感じさせる。

「これは何のURL?」
「画像掲示板です」
「中身はなんなの?薬物取引や援助交際に関する情報だと大変ね。正直に話して」

 智浩は科目の中で英語は得意だったので、宿題を見せてもらうように頼まれ、ノートを見せる代わりに報酬を要求するとこの世代に貴重な成人向けの紙媒体やDVDでなくスマホで見れるサイトで学生という親と同居という環境に適したものであるはずなのに、引渡しの時期が悪かったばかりに露見してしまい、有りもしない疑いをかけられてはかなわないとおとなしく白状する。

「エッチな画像です」
「事件性はなさそうだから、今回だけは許してあげる。それと、先生もこういう投稿系は好きよ」
「先生も見たりするんですか?」

 不正が露見せずに済んだのとアダルト向けデータの出所である同級生の名前も口にしないで終わったので、教師からも同級生からも非難を免れたのも智浩の正直さと百合子の寛大さのおかげに見えた。

「見るだけだったら大目に見てあげる。投稿するのは大人になってからね。リスクがあるから。林原くんは優秀だし特別よ」
「そんな、英語はたまたま得意なだけです。数学は苦手だし、球技も嫌いで…」

 智浩は生徒として愛されてると感じて胸を撫で下ろす。確かに成績が平均を上まわったのも百合子の教え方がよくて態度や口調も穏やかで誠実なのも大きく影響しているのである。
 普段は日直でもないとこれだけ近い距離で耳に残る声の麗しの英語教師と会話することもなく、冴えない服越しであっても小柄なのに平たく薄型骨格の昔の日本人特有のコンプレックスとは無縁のムチムチしたボディを目に出来なかった。

「先生の前で数学が得意って言われても嬉しくないわ。部活とか恋愛で充実してる子に興味はないの。満たされなくても希望を持つことが大事よ。それとも、カウンセラー室行きが良かった?」

 数学教師にしてスクールカウンセラーの多宮亜矢は校内でも異彩を放つ存在で、百合子の先輩で年よりも若く見える派手な服装のセクシーな熟女で一部の男子に人気あって同性として彼女が意識しないわけがない。

「カウンセリングって言っても、筒抜けになってるかもしれないので信用できません。進路とかで悪用されると困ります。やっぱり、外部の人がカウンセラーでないと」
「そうよね、ずるいわよね。先生は今日のことは絶対秘密にするから」
「ありがとうございます」

 最初に感じた恐怖は消え去って趣味嗜好が一致したばかりか百合子の女性としての一面も見れてより身近な存在だと感じた。亜矢も一応は話のわかる人間ではあるが、今日でもグラマーではあるがもうお姉さんとは呼べないと歳だし、教師としての顔はファジーな要素のない科目が担当なだけに厳しい部分があって女でも甘く見られたくないという思いが強いのは反発しやすい年頃には不快に写り、美形の部類に入っても個性的なヘアスタイルや服装は智浩の理想の女性像とずれていて好感が持てず、分析でもされようものなら粗探しと同じとすら思って距離を置いていた。

「エッチが悪いことでないくらいカウンセラーじゃなくても分かるわ。肉体の成長に合わせて心の成長も大事よ。せっかくだから、どんな作品が好きか教えて。青少年の性の傾向に関心があるの」
「Gカップ女教…」

 好き嫌いが一致してることで警戒心が緩んでむっつりスケベにも関わらず吐露してしまう。

「先生もGカップよ」

 百合子の発言をすぐに信じろという方が難しかった。だぶだぶのジャケットにロングスカートやパンツルックという地味さで、新人の頃に比べてメイクにメガネとロングヘアにシュシュとスタイルに比べて美貌の方は封印はやめており、ただのオバサンという陰口はなくなったがデブじゃないかという中傷が一部の女子の間にみられた。智浩は大半の男子が大きなヒップに目が行くのに対して、様々な角度からの観察で隠れ巨乳だと見抜いていた。

「…すみません。つい、うっかり」
「責めてないわ。先生も大人の女だってこと。もし…今日のことが先生のことが目当てでわざとだったとしても、こうやって話せるから…林原くんが私ぐらいの歳と顔でもよかったら誘われたいな」
「わざとだなんて、絶対怒られると思ってビクビクしてたのに…冗談やめてください」
「先生だって性欲やフェチはあるのよ。林原くんは年上が好みみたいだけど、先生は年下がいいな」
「何だか、恥ずかしいです」
「いい趣味じゃない。男の子らしくて。女性の魅力を正しく理解してるのは健全よ。もし、幼女とか貧乳が好きとか深刻な問題があったら職員会議の議題にしないといけない所だったわ」

 笑いながら百合子は菩薩と鬼の一面を顕にする。彼女は男子生徒が好きでも、今では受け入れる相手は限られていた。実際に恋愛していたりモテる少年は汚らわしい存在で、特に年下だったり膨らみや丸みに欠ける肉体を性の対象に望む男性全般も毛嫌いしていた。
 内気だったり不器用で恋愛と縁遠く女性に理想を抱いてる一方で趣味と妄想に逃避するしかない渇望している少年は夢を抱く純粋な存在で、性欲が最も盛んな世代の童貞に崇拝に近い気持ちを抱いていた。優秀なだけの少年に好意を抱いて甘いだけの理想に酔いしれる地に足のついてない妄想より、脈のある相手を挑発する有言実行型の孤独だが活動的なアラサー女である。

「それは…困ります」

 乳房の大きさは積極的に誇示するもので貧乳など恥ずべきものと考えていたが、智浩は改めてそれが正しいと実感する。百合子の美貌もスタイルが伴っていないと眼中になかったかもしれない。それでも、なぜ結婚できたか不思議に見える顔と体つきの人妻とは名ばかりの口うるさくて性格の悪い古株の教員に比べたら雲泥の差であった。

「先生だって、嫌よ。この格好も校長やPTAに睨まれないためにやってるの。多宮先生なんかとは違うから…私の本当の姿を見て」
「…!」

 持っていたメモは戻って来なかったが、取り締まる側の人間から期待させるアイテムを渡された上に耳元への吐息だけでなく頬にキスされたので智浩は驚きと興奮で無意識のうちに勃起する。百合子が去っていった後もしばらく動けないでいたが、帰ったら絶対オナニーしようと決意していた。

 智浩が渡されたマイクロSDカードには女性の自画撮りと思われる画像が何枚も入っていて、最初は胸の谷間やスカートを捲ったパンチラで徐々にエスカレートして派手な下着のセクシーポーズやセーラー服やブルマといったコスプレもあって極めつけはトップレスで片手で胸を寄せ上げたものやパンティの脱ぎかけで乳房だけでなくヘアまで見えてる一枚もあって没収されたデータよりリアル女教師の貴重な画像は何物にも代えがたい価値があった。
 教師のやることとは思えないが、首から上は一枚も写ってないので特定は限りなく不可能に近いのでよく計算されており、エロ系のジャンルである女神行為と呼ばれる自撮りに長けてると彼は後に知る。
 深読みをすれば手渡されても細川百合子本人である可能性には疑問があり、彼女と同じ色白で豊満な女性の画像でごまかされても不思議はないと思われた。
 しかし、データよりも価値があると思われる情報も含まれていた。最後の画像にアドレスが記されていてフリーメールであっても連絡先なので、画像の感想や念のための確認などから始まり、彼女が数年前から顔は写さない自分のエロい画像の投稿を行なっているという秘密を打ち明けられてからは、自分が信頼されていることと性に対してもオープンで理解があるのでなく百合子自身がかなりの欲求不満を抱えている事が分かった。学校ではとても教師の前で口にできない表現や単語も交えた密な交流になってついに校内で情事を行う約束をする。
 当日になって彼女と直接会うまでは、ユリというハンドルネームの男に飢えたエロい独身女性が別にいて学校にいる細川百合子とは別人かもしれないという強迫観念にも似た不安を抱えていた。


「図書館に秘密の場所ってあるんですか?」
「あるのよ、誰にも見られないし…大きな声で喘いだって平気」

 百合子は自分の根城である図書館に智浩を誘う。図書館は校舎から離れていて、カウンセリングルームは図書館より離れていてそこで亜矢が男子生徒と行為に及ぶことも知っていたので恨めしく思っていた。
 彼女が管理を任されてる図書館の裏口と閉架エリアの鍵をもってるので、閉架のリファレンス用のパソコンのモニタに無断で持ち込んだ中古パソコンをつないでいてたまにDVDを見ながらオナニーをしていた。そんな日々も終わると思うと嬉しくてたまらず、図書館書庫での蔵書検査の際にいつも着るジャージも智浩の前というだけで女らしい色で普段は選ばない上半身がタイトなものを用意して着ていた。

「あの…喘ぐって?」
「林原くんが先生の写真でオナニーしてる間、先生もオナニーしてたの」

 自画撮りが三十路になる前の記念という動機もあって、常に隠し持っていたのも今度は一人で気に入った教え子を誘惑するためだったからで、パンティーラインやブラが透けるだけでやたら感激するレベルの童貞少年のリアクションは過去に付き合った三人の歳相応の男性からは得られない充足感だった。メール交換がすぐ性的な内容が中心になったすぐの頃は教壇から智浩の席の辺りをじっくり見れなかったり、逆に彼が筆記体を書いたり消しゴムを使う際に右手を小刻みに動かしたり机が若干揺れるのを注視していると少年が初々しいペニスを机の下で懸命に扱いてる様を連想していた。決してありえない光景が頭に浮かんだ瞬間、ショーツのクロッチで覆われた割れ目に感覚が集中して陰核が小さく跳ねたかのような錯覚を起こし、思わず教卓の影で下腹部に手を当てた程である。教育者でありながら教壇で牝として子宮を持つ事を強烈に実感するなど、亜矢の手引きで肉体関係に及んだ教え子との蜜月の頃にも経験していない程の狂おしい執着であった。

「家じゃなくて学校で?」
「そうよ。本当は教室の林原くんの机の角でしたかったんだけど…バレたら大変でしょ。本当は男子トイレってのもいいなって思うけど、バレたら教師人生終わっちゃうから…動画で見るだけ」
「先生はどうして俺に優しいんですか?それにエロい」
「運命的なものを感じるの。四年ぶりよ…あれからずっと一人だった」

 百合子が裏口の鍵を開けて入ると、智浩もそれに続く。書庫に入ると百合子はすぐに蛍光灯のスイッチを入れてそれとなく履物も準備していたセクシーなルームミュールに変更する。




ヒロイン属性:女教師、三十路前、ナルシスト、欲求不満




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